マロニエとはフランス語で、Marronnierと書く
ムクロジ科トチノキ属の落葉樹セイヨウトチノキのことで、栗の仲間と誤認されたこと、馬の胸部疾患を治療するために使われたことからHorse-Chestnut(ウマグリ)という別名がある
原産地はバルカン半島〜トルコにかけての森林地帯とされ、ギリシャなどバルカン半島の山地に自生する
栽培植物としては世界各地の温帯で植えられる
36m程まで成長し、対生する葉は日本のトチノキに比べて小型
白い花に赤い斑点という形態が多く、開花は春
20〜50個の花が円錐花序を形成し、一つの花序あたり1〜5個の果実を作る
果実は緑色で柔らかいトゲのあるカプセル状である。日本のトチノキにはトゲが無いため、識別点の一つとなる
カプセルの中に入っている種子はトチの実として食用になるが、若い実はサポニンやグルコシダーゼを含むため弱いながら有毒
ネイティブアメリカン達はサポニンを抜くために長い時間茹でる。あくまで可食というだけで非常に面倒なためあまり好んでは使われない
毒はシカなどにとっては分解可能で安全な食糧となる
このトチの実が直径2〜4cmほどの球に近い形で、光沢のある茶色、底が白いためたしかに栗にも見える
オスマン帝国に駐在していたオージェ・ギスラン・ド・ブスベック(
チュ-リップをヨーロッパに伝えた人)が1557年に記したのが最初で、ギリシャ以外のヨーロッパ各地に知られたのはそれ以降。マロニエ並木のあるフランスへの移入は1615年のこと
17世紀になると解熱剤として樹皮と種子が評価を受け、キニーネの原料であるキナノキの代用品にされるようになった
また、1806年にはナポレオン1世が敷いた大陸封鎖令によってマロニエが見直されることとなったが、信頼性の面ではキナノキの方が上であった
血行不全に効果があることが知られるようになると、マロニエを解熱剤に使うことは減っていった
フランスやスイスでは麻、亜麻、絹、羊毛などの脱色、あるいは布を洗濯する石鹸としてトチの実を利用した
世界大戦時にはデンプン源として、火薬の原料になった
ちなみに、非常に安直だが栃木県の県木に指定されている