アヤメ科クロッカス属の多年草
香辛料としてサフランと言う場合、部位としては乾燥させためしべのこと
原産地は西南アジア、つまりアラブ周りの地域で、栽培を始めたのはギリシャとされる
地中海に浮かぶとある島から壁画が発見されており、栽培の歴史は青銅器時代(ヨーロッパでは紀元前3000〜800年代ごろ)には始まっていたと考えられている
有性生殖が難しいため分球による栄養繁殖に頼り、分布拡大は遅い
アメリカやオセアニアはもちろん、アフリカへの持ち込みもユーラシア大陸全域に拡大した後になる
一方で原種は野生になく、由来もいまいちはっきりしていない
おそらくは
Crocus cartwrightianusからおしべが長いものを厳選を繰り返し生まれたのが現代まで栽培される
Crocus sativusではないかといわれる
同じ属のクロッカスとは「花サフラン」「薬用サフラン」という呼び分けをすることもある
薬用と言いつつ、もちろん花を鑑賞するために栽培することも十分にできる
球根は7月から流通し、植え付けが8月開花が10〜12月
草丈は10cm程度から大きいもので30cmになり、一株で最大4本の花茎が出る
球根に栄養を蓄えてあるため、越冬をしないのであれば植えなくても開花する
放置プレイ
春に雨が降り夏に乾燥する環境を好み、基本的に暑い環境で繁殖するが耐寒性は-10℃となかなかに高いうえ霜・積雪にも耐える
土地としては日光をよく受けられる傾斜地がよく、水はけの良い粘土石灰質の土を好む
イタリアでは収穫量を増やすため、15cm間隔の深さ2〜3cmに植える
夜明け頃に花が開きすぐに枯れる
花としての特徴はやはり大きな紫の花冠と黄色いおしべ、真っ赤な
誓い柱頭という派手なコントラスト
こいつのめしべは赤く塗らないのかい?
色味や花の形が非常によく似た花として
コルチカムがあるが、区別する点としてコルチカムは花茎だけ伸びて葉を付けないのに対しサフランは葉がある
一応業者側で分けて販売しているため名前をちゃんと見ていればそうそう間違うこともないだろうが・・・
区別を正確にできないとコルチカムは全草が有毒で死亡に至る可能性があるため自分でサフランを収穫してはいけない
なお、サフランなら大丈夫かというと実際そうでもなく、過剰摂取は副作用として流産の可能性を持つといわれ、また12〜20gが
致死量となっているため、安全に使用するためには妊婦の摂取はもちろんそうでない健常者でも5g以上の摂取は避けるべきである
もっとも普通料理に使う量は糸数本分でよく医療用で何グラムか程度なので中毒になるほうが難しいのだが・・・サフラン中毒で危ない目に遭った人が実際に居るっていうんだから世の中何があるやら
サフランの収穫はめしべが目的であるため、早朝日も昇らない暗い中の作業となる
開ききる前のつぼみをデコピンするとめしべが飛び出し、それをハサミで回収する
サフランのめしべは根元が白く黄色を経て赤くなるが、そのうち赤い部分だけを厳選したものが高品質であるとされる
サフランは高級品としての歴史も長く、古代ギリシャではサフランイエローは王族にのみ許された色であった時代もあり、今もなお同じ質量あたりに付けられる価格では世界でも最も高価な香辛料であるほど
そのため国際的にサフランの品質は基準が明確化されており、色素クロシン、風味のもとであるピクロクロシンと香り成分サフラナールの量について成分分析にかけられる
ここまでしてもISO認証を受けない業者も多く、偽装が繰り返し行われている
中世ヨーロッパではその高級さゆえに「サフランの束法」を制定し、ビーツやザクロの果皮、サフランの花柱(めしべの黄色の部分)、果ては食べ物ですらなく赤く染めた絹糸など混ぜものでごまかしたサフランを販売すると
死刑に処していた
混ぜものをせずともハチミツや油に漬けて重くしたり、粉末サフランになるとパプリカや
ウコンなど近い色の粉、低品質のサフラン粉でかさ増しされる
サフランが高級な理由は収穫作業に技術が必要なこと、および500gの乾燥サフランのために5万以上の花、そのための60m四方の作付面積を要することによる効率の悪さである
ちなみにウィキペディアによると1kgの乾燥サフランのために40時間かけて収穫するとのことなので、この500gのためにも丸一日ぶっ通しで作業ということになる
サフランの利用は香辛料として食用利用が最多である
スペイン料理においてバレンシア風パエリアやサルスエラ(魚のシチュー)に使うサフランライス、ファバダ(スペイン、アストゥリアス州風の煮込み白インゲン豆)
フランス料理ではブイヤベース(マルセイユの魚シチュー)、イタリア料理でミラノ風リゾット、スウェーデンではサフランを使ったパンのルセカッテ、ルセカッテを真似たイギリス南西コーンウォール県のrevel bun
イランでは国民食チェロウ・ケバブ(羊のミンチを串で焼いたもの)、ウズベク人は結婚式で振る舞われるピラフ、モロッコ人は煮込み料理であるタジン(トマトと肉団子、
シトロンとチキン、
プラムとアーモンドと子羊など複数パターンあり)や混合調味料チャラモーラ
インドでは米料理のビリヤーニーやグラブ・ジャムン(濃縮乳、小麦粉、砂糖水で作るサーターアンダギー的なお菓子)、クルフィ(煮詰めた牛乳を凍らせた氷菓)、ダブルカミータ(結婚式を含むパーティーで出されるホットミルクに浸した揚げパン。焼くと倍になるためダブルロティと呼ばれるパンからダブルと付くらしい)、ラッシー(ヨーグルトベースの飲み物。乳酸菌摂ってるぅ〜?)
アルコール飲料としてシャルトリューズ、イザラ、ストレガなどに使用される
高いため着色だけならベニバナやウコンを混ぜたり代用したりする。サフランの色素は水溶性、ウコンの色素は脂溶性なので手順のアレンジは必要となる
医薬品としても古代より迷信も含め多分に使用される
胃腸薬、月経促進、風邪、喘息、ペスト、天然痘に、血液疾患、不眠症、心臓病、痛風、夜泣き、
媚薬、食中毒、赤痢、黄疸などもはや無節操なまでにアレやコレや効果があるとされた
近年では色素でもあるクロシンなどのカロテノイドが抗がん剤や免疫調整の効果が示唆されており、酸化防止作用による老化防止効果も期待されている
着色に用いるのはおしべの方で、おしべに香辛料としての意味は特にない
サフラン色は
HTMLコード#F4C430、RGB244/196/48で表される
ヘマトキシリン、フロキシンと混合し、細胞染色にも使用する
香水としてムラサキ科のアルカネット、キジカクシ科リュウゼツラン亜科の竜血樹、ワインなどとともにcrocinumというサフラン油が、芳香剤としてサフランとワインを混ぜたものが使用された
サフラン(saffron)の名前の由来は諸説あり、12世紀フランス語safran、ラテン語safranumと遡るとペルシャ語のザアファラーン(zaʻfarān)に辿り着く
そこでさらにzar-parānという語源があるのではないか、とかアラビア語のaz-za'faranこそ語源だとか言われてはいるものの正確には確認されていない
サフランの実家が営む高級アパレルブランド「アスファル」の語源はサフラン染色によって出る特有の「黄色」
文字化けしそうなのでアルファベットで書くが、アラビア語で「'asfar」とは「黄色」を意味する
サフランの
花嫁衣裳が実装された
アルーサ・フェスタ!もまた、「アルーサ」がアラビア語で「花嫁」を意味する
このためサフランとアスファルの語源の関係を知る一部ハゲ公からはアルーサという一単語だけで一人はサフランだろうと予想されていた
花言葉は「節度ある態度」「陽気」「喜び」「濫用するな」など