アイスクリームを主として、エッセンスオイルまたは果実での取り扱いが中心となるバニラ
その正体は
Vanilla planifoliaという蘭
原産地が中米とされ、栽培は近い緯度であるメキシコ〜ブラジル、マダガスカル、インドネシアなど
国内での個人栽培も可能っちゃ可能だが、前提として熱帯性のランなので難易度は推して知るべし
またつる植物であるため絡みつく先が必要で、しかも何十メートルにまで伸びる
花は白黄色で、形状としてはラン科標準の萼片3+花弁2+唇弁
果実はチリのように細長く、中には黒い種がいくつも入っている
バニラという名前はこの形状から、剣の鞘が由来になっている
その単語、ヴァギナ。レストランだったり診療所だったりするあれと語源は同じ
あの特徴的な香りの発生源はこの種子で、発酵と乾燥を繰り返すことで香料として完成する
その状態で取引すればバニラビーンズ、溶剤に香りを溶かしたものならバニラエッセンスまたはバニラオイルとなる
そのまま嗅ぐと文字通りむせ返る凶悪な甘ったるさであるため、香り付けにはほんの1滴2滴で適量
大きな株でなければ花が形成されないため、日本での栽培における最大の関門はやはりそれまで何年もの間冬の最低室温が確保可能な温室の用意だろう
そうまでしても一度の開花は8時間程度と短いため、見たいだけなら赤道付近の国に見学に行くか、お近くの植物園に通い詰めるのが懸命
普通、バニラの受粉は蜂による虫媒で行うが、1841年、なんと12歳の少年が人工授粉の方法を見つけたことで栽培効率が飛躍的に向上した
何がすごいってこの蜂、中央アメリカにしか居ないこの蜂以外がバニラを授粉させることはないと考えられているぐらいの存在で、持ち出して結実させることができるというのは概念がまるっとひっくり返る出来事である
この発見によって、中米ではないマダガスカルとインドネシアが世界のバニラ農園の大半を占めるようになったぐらいの偉業である
それでも諸々の難易度やら手間暇やら全部合わせて、2006年当時の統計ではグラム単価13円をマークする世界で2番目の超高額スパイスとなっている
そのデータで次に来る
レモングラスがグラム単価1.6円しないと言えばその価格の異常さが伝わるだろうか
1位のサフランは31.5円とまだダブルスコアつけているが
2017年にはマダガスカルが天災にみまわれたことで大高騰したため、取引価格が銀を超えたという
サフランは素で超えてる
さすがにこれだけ値段が張ると、エッセンスやオイルには多少の人工香料が混ぜられることも多い
実は香り成分のバニリンはそれだけ合成するのは難しくない物質だったりもする
なお、これだけ希少で高価だったりわざわざ合成してたりするというのに、何の変哲もないシンプルなミルクアイスがバニラエッセンスを入れてバニラアイスとして売っているがために、何のMODも入れていない状態をバニラと呼ぶようになった
実物が重課金兵御用達アイテムなあたり皮肉なものである