リリィウッドの夏の日、中心街は祭りに賑わい宙(そら)を彩るは慰霊の天華。
この日は年に一度、対害虫戦の戦没者を弔う天華祭。
いつも通り花火は消えたが今回は害虫のしわざらしき痕跡は無い。
オミナエシが別行動をさせたハゼランが見つけて来た花火泥棒は、大方の予想通り人間。リリィウッド領内の館に仕えるメイドの少女。
理由を何一つ喋る気のない少女に、ハゼラン、エケベリアそれぞれのアプローチで聞き出そうとするもつぐんだ口は開かれない。
慰霊の花火が始まり場所を移した隙に少女が向かう先にあるのは天華祭で弔われる者の名が刻まれた慰霊塔・・・
害虫に襲われたところをヘリオトロープに救われ、ようやく聞かされた花火泥棒の理由、それは―――――
かつて命を助けられた恩人の、慰霊
かつてリリィウッド領内で戦死していながらその名を刻まれなかった花騎士への、彼女なりの感謝。
しかし、あくまでも「リリィウッド公式行事として」の桃源郷の花騎士の扱いが難しいというだけで、そこに出身の差別は無い
ここまで聞いた花騎士に彼女を否定する理由などは無く
オシロイバナ謹製の花火を持って森の奥へ。
残ってハゼランと二人で特別な弔い花火を眺めて帰った少女の胸にはもう、上がる花火に込もる想いが深く刻まれたことだろう――――