桃源郷、そこは花街と同時にワケアリな女性の駆け込み寺という側面を持つ
花魁として桃源郷で生を終える者もあれば、新たに結ばれ去りゆく者もある
ある種孤児院のような一時避難の場として、一度巣立ったなら戻らず幸せになることが一番の喜び
花魁の仕事をしていない女性らにも、少しでもその機会を恵みたい、その思いから花魁が行っている「花嫁道中」に参加させる運びとなった
各々の事情から自信を失っている女性も多く、箔を付けて自信に繋げてもらいたいと呼ばれたは団長
しかし、桃源郷の女性にはハナショウブへの恩があり、彼女が花嫁道中に参加しないことに納得していなかった・・・
そこでハナショウブが素直に折れるはずもなく、出番があるなら最後の最後と断言された
じゃあ最後にならせればいい、つまり桃源郷の全員を参加させちまえという豪快な答え
それはそれで、ハナショウブに遠慮してしまい参加を渋る人も居て難しい問題だった
桃源郷の連絡役としてこの日も裏で参加者のサポートをしていた女性も、かつて連れて逃げ込んだ娘の存在が気がかりで恋仲の常連客との関係を進められずに居た
ここで団長が出発前に託された手紙を思い出す
宛名はまさに連絡役の彼女だった
相手の商人は娘のことをとっくに知っていて、そして・・・それでもなお、結婚して、ブロッサムヒルで共に暮らしたい、つまり身請け人になると、そのために花嫁道中の当日桃源郷まで行く団長を頼ったのだった
彼女でついに最後の一人。宣言通り、桃源郷の女性全員を花嫁道中に参加させきった
なんちゅうやっちゃ
独立自治区桃源郷の、その名の由来でもある旅館桃源郷。その女将が最後に相応しい華を添え、花嫁道中は幕を閉じた
行く手さえぎる雨雲や、嵐が待つ日もあるけれど。
禍福全てを呑みこんで―――
―――歩め、花嫁、天気雨