以前、桃源郷の花騎士をきっかけとして
花火泥棒騒動が起きた
その時の犯行動機は、誰にも弔われず、慰霊碑に名前すら刻まれない恩人への手向けであった
桃源郷の者であることを理由に、公式に干渉できないがために、このようなことが起きた
騎士団とのわだかまりも緩み、緊急時だけでも共同戦線を積極的に作るようになった今
今だからこそ提案できる。「死者は等しく弔われる慰霊祭」
桃源郷という土地柄、参考にした天華祭以上に不幸を経験した人も多く、何とも声のかけづらい空気が漂う
祭りという形式は、そんな遺族への慰めでもある
なおのこと害虫の接近を許すわけにはいかない
だが今回は珍しい客が来る
毒の影響が薄く、人に敵意を持たない害虫がこちらを見て祭囃子を楽しそうに演奏しだした
いつまで様子を見てもそれだけだった
その油断を突かれ包囲されたとき、この害虫は太鼓の音で周辺の害虫を人のいない山奥へ誘導して去っていったのだった
祭りの終わりを告げる花火に混じり、彼らの太鼓がかすかに轟く
次はきっと浄化を終えて友人としてもう一度
千年の悲願を目指して遠く囃子に思いを馳せる